【流 通】日本製鉄 微生物を利用してCO2から基礎化学品を製造する研究開発に着手

日本製鉄は微生物を利用して二酸化炭素(CO2)から基礎化学品を製造する研究開発について、オーストラリア研究会議が公募するプロジェクトにクイーンズランド大学、アーバンユーティリティ社(オーストラリア)と共同で応募、採択され、研究開発に着手した。

日本製鉄は気候変動問題に対する独自の取り組みとして、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン 2050」を公表し、2050年までのカーボンニュートラルの実現を経営の最重要課題と位置付けている。CO2を原料として有用な化学品や燃料を製造する技術であるCCU(Carbon Capture and Utilization)はカーボンニュートラル実現のために欠かせない。

CCUの多くは触媒を用いる化学反応を利用しているが、一般に触媒を用いるプロセスは高温、高圧を必要とする。これに対し微生物を用いるプロセスは常温常圧で反応が進むため、省エネルギー、低コストが期待できる。

今回、日本製鉄は、この分野で先駆的な研究を行っているクイーンズランド大学を研究代表としてオーストラリア研究会議が公募する連携プロジェクト(ARC Linkage Project)へ応募し、採択された。研究開発で生産を目指す基礎化学品は、分子のなかの炭素原子の数が6〜8つの中鎖脂肪酸と呼ばれる物質で、中鎖脂肪酸は微生物を用いて合成することが可能であり、燃料、飼料添加物、医薬品など幅広い化学品の原料となる基礎化学品であるため、近年注目を浴びている。

研究代表者のクイーンズランド大学のBernardino Virdis 博士の研究チームは、すでに実験室で微生物によるCO2を原料とした中鎖脂肪酸の合成に成功している。今回の研究開発では、プロセスの最適化およびパイロットプラントでの検証を行い、実証段階への道筋を作ることを目指す。日本製鉄では製鉄所で発生する排水の浄化処理を対象に微生物を利用した技術の研究を20年以上前から進めて知見を深めており、ここで得た微生物評価技術や知見を活用することでプロジェクトに貢献する。


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