【知 識】JEITAと静岡県三島市 地域課題解決に向けてパートナーシップを締結
電子情報技術産業協会(以下 JEITA)のデザイン部会(※1)と静岡県三島市は、「デザインエコシステム形成プロジェクト」の実現に向けたパートナーシップを締結した。デザイン部会が地方自治体と共同の事業を実施するのは今回が初めてで、JEITAが事業指針として掲げる「Society 5.0の推進」に基づき、企業の持つデザイン資源を地域に還元し、課題解決に向けた産官民のエコシステムを形成することで、持続可能な自治体運営と地域の産業発展の両立をデザインの力で実現することを目指す。
JEITAは業界団体として会員の競争力強化に努める一方で、近年の複雑化・多様化する社会課題に対する産業界の社会的な責務を果たすため、IT・エレクトロニクス産業を中核に多様なステークホルダーを結節するプラットフォームへの進化を掲げている。
IT・エレクトロニクス業界において、これまでのデザインは製品の外観やUI・UXの設計、企業のビジョン発信などの領域で活用されてきたのに対し、今後はテクノロジーとサービス、企業と消費者、企業と社会等を、人間中心の視点で繋ぐ役割として機能することが求められており、JEITAが目指すプラットフォーム構築に向け、デザインの力への期待が寄せられている。
デザインエコシステム形成プロジェクトは、デザイン部会に所属するインハウスデザイナーがサポーターとなり、地域の関係者が共通で抱くありたい未来像を可視化し、これまで気が付かなかった地域の魅力や解決したい社会課題を明確にすることで、産官民のパートナーシップをより一層強化していくことを目指している。これまで企業に所属していたインハウスデザイナーは、所属企業の製品やサービスの充実に向けて活動してきたが、デザイナーが持つ素養であるユーザーへの共感から生まれる本質的課題解決手法と、目指したい姿の可視化という強みは、街づくりの場においても活用できると考え、デザイン部会では、デザインエコシステム(※2)の形成について検討してきた。
一方、静岡県三島市は"せせらぎと緑と 活力あふれる 幸せ実感都市・三島"を将来都市像として、移住定住の促進や子育てしやすい街づくりに取り組んでいるが、ライフスタイルが多様化する中で、必要な対象に情報を届けかつニーズに対応するためには、市民と市職員の効果的なコミュニケーションをデザインする必要性が高まっている。
このような課題を解決するためには、多様なステークホルダーを巻き込み、トライ&エラーを繰り返しながら解決案を改善できる場が欠かせない。市民への共感を通して見つけた課題を可視化・共有し、あらゆる市民が参画できる持続可能な課題解決モデルの構築を企図して、デザイナーにより構成されるデザイン部会と、デザインエコシステム形成のための実証事業を共同実施する運びとなった。
デザイン部会がこうしたデザイナーの強みを生かして、市民と市職員の間に入り、両者が本当に望む社会の在り方について、問いを通して描くことで、日本の地域の実態に沿った人間中心の街づくりの一助となることを目指す。
※1 JEITAデザイン部会
国内24社のメーカーに所属するインハウスデザイナーによって構成された組織。デザインの専門集団として国内外のデザインファースト事例の研究活動や発信を行い、産業競争力強化および企業価値向上に資する活動を推進している
※2 デザインエコシステム
デザインアプローチによる、オープンな社会課題解決の仕組み。複雑な社会課題が溢れる世の中において、技術中心の解決策や個別の取り組みから脱却し、本当に解くべき課題は何かを特定し公開することで、あらゆる立場の人が同じ課題に向き合うことのできる社会を目指している
・製品名および会社名などは、各社の商標または登録商標です
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