【流 通】日本ハム 培養液の主成分である動物血清を食品で代替することに成功
日本ハムは培養肉の細胞を培養する際に必要となる「培養液」の主成分を、これまで用いられてきた動物由来のもの(血清)から一般的に流通する食品由来のものに置き換えて、ウシやニワトリの細胞を培養することに成功した。今回の成功により、培養液のコストで大きな割合を占める動物血清を、安価かつ安定的に調達可能な食品に代替できることになり、将来的な培養肉の社会実装に向けて前進した。
世界人口の増加に伴い、食肉全体の需要が増加傾向にある中、2030年ごろまでにはたんぱく質の需要が供給を上回ると言われている。動物の細胞を培養して作る培養肉は、従来の畜産が抱える環境負荷などの課題を解決しながら動物性たんぱく質を供給できる手法として期待されており、日本ハムは2019年より培養肉の研究開発を進めてきた。
動物細胞の培養には、細胞の増殖をサポートする多くの成分を必要とするため、ウシなどの動物由来の血液成分(血清)が使用されている。しかし、こうした動物由来の血清は動物の体から採取するため、高価であるばかりでなく、安定調達が困難であることから、培養肉の商用化を目指す上で動物由来の血清を添加しない培養液の開発が求められていた。
日本ハムの中央研究所はウシやニワトリから採取した筋肉の細胞を血清添加群、血清未添加群、食品成分を利用した培養液群の三群に分けて培養シャーレ上で培養した結果、血清未添加群では細胞の増殖がほとんど見られなかったのに対し、ある特定の食品(特許出願中)を添加した群では、血清添加群とほぼ同等に細胞が増殖することを確認した。またウシとニワトリで異なる結果が得られたことから、異なる畜種においては、増殖促進に適する食品成分が異なることも確認した。また、実験用の小型培養装置を用いて、開発した培養液中でニワトリ由来細胞の培養を行い、培養肉を試作した。
今後は、食品成分由来の培養液を用いた培養肉の実現に向けて技術を確立するとともに、培養スケールの拡大に向けて、培養肉の生産技術に関する研究開発を推進する。
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