【知 識】東大と農林中金 持続可能な食料システムへの転換に向けたプロジェクト開始
東京大学と農林中央金庫は農林水産省の協力も得ながら、持続可能な食料システムへの転換に向けた連携プロジェクトを2022年4月1日に開始した。
今日の経済システムによる環境負荷は、気候変動や生物多様性の喪失などをはじめ、人類の発展を支える地球環境システム(グローバル・コモンズ)の危機をもたらしている。その中で食料システムは、農業由来の温室効果ガスの排出、食料生産のための森林転換、水資源の過剰利用、土壌の劣化や水質汚染など、様々な環境負荷の要因となっている。2050年に100億人近くに到達する人口に対する健康的な食事の保証と、食料システムによる環境負荷の大幅な削減の両立に向けた変革が、世界的な優先課題とされている。
こうした中で、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため、中長期的な観点から戦略的に取り組む政策方針として、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を2021年5月に策定し、農林水産業のCO2ゼロエミッション化等の目標の実現に向けた施策を推進している。食料輸入大国である日本は、国内のみならず輸入食料のサプライチェーンに対して責任を有しており、グローバルな観点から食料システムの持続性を高めるための具体的な方法を模索していく必要がある。
東京大学グローバル・コモンズ・センターと農林中央金庫は、日本の食料システムを持続可能なものへ転換していく道筋を明らかにすることを連携の趣旨としてプロジェクトを立ち上げ、今後3年間の予定で実施する。プロジェクトでは、日本の食料システムによる国内・海外への環境負荷の把握、グローバルな環境負荷削減技術の動向の分析、食料バリューチェーンの構造分析、食料品の環境負荷情報に対する消費者行動の分析等、様々な側面からの研究アプローチを通じて、日本の食料システムが将来的に目指す姿と、その実現に向けた主要な関係者(生産者、食品関連産業、投資家、消費者等)の行動変容を引き起こすためのアクションを提示する。プロジェクトの成果を共有・発信しながら、食料システムの転換を実践し、ひいては世界の食料システムの変革に向けた枠組みに貢献していくことを目的にしている。
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