【アジア】商船三井 インドネシアでマングローブの再生・保全プロジェクトに参画

商船三井はワイエルフォレスト(以下 YLF)と共同し、インドネシア・南スマトラ州で、マングローブの再生・保全を目的としたブルーカーボン(※1)・プロジェクト(※2)に参画する。

このプロジェクトで商船三井は資金面での貢献に加え、今後は現地でのプロジェクトの運営にも深く関わっていく。 YLFは国際マングローブ生態系協会(以下 ISME ※3)による技術指導の下、2013年より南スマトラ州において残存する約14,000haのマングローブの保全活動を行ってきた。

プロジェクトでは30年間で森林保全活動による約500万トンの二酸化炭素(CO2)の排出抑制、さらに約9,500haの裸地でのマングローブ等の新規植林による約600万トンのCO2の吸収・固定を目指す。現在、国際的なカーボンクレジット基準管理団体 Verra(※4)による認証を受けるべく、2022年前半のプロジェクト登録を目指して手続きを進めている。

マングローブはCO2を取り込み、炭素を蓄えるだけでなく、命のゆりかごと呼ばれ、マングローブと共に生きる生物の多様性を守っている。また高波から沿岸に住む人々の暮らしを守る等、気候変動への適応策としても非常に重要な存在です。商船三井はYLFと共に、プロジェクトを通じて、マングローブの再生・保全活動を行う他、シルボフィッシャリ―(※5)を導入し、持続可能な水産・森林経営を通じて地域住民の生計向上を支援し、人と自然が共生する社会づくりを目指す。 商戦三井グループはモーリシャスにおける自然環境回復事業(※6)を通じて、ISMEをはじめとするパートナーからマングローブの重要性について学び、海の豊かさを守るネイチャー・ポジティブ企業(※7)を目指して、気候変動対策や、海洋環境保全、生物多様性保護などに積極的に取り組むこととした。2021年6月に策定した「商船三井グループ 環境ビジョン 2.1」では2050年に向けてスコープ1,2、3の全てを対象にネットゼロ・エミッション達成を目指している。同社グループは多様なステークホルダーとの共創を通じて、自然及び技術ベースのネガティブ・エミッション(※8)の創出にも取り組み、ネットゼロ・エミッションを実現していく。 


 ※1 ブルーカーボン ブルーカーボンとは、マングローブ、海草藻場、塩性湿地といった海洋生態系によって隔離・貯留されたCO2由来の炭素。2009年10月に国連環境計画の報告書においてはじめて定義され、陸域の森林等により吸収されるCO2由来の炭素「グリーンカーボン」とならんで、自然ベースのネガティブ・エミッション(※8)として注目されている

 ※2 当該プロジェクト YLFは南スマトラ州オーガン・コムリン・イリ―ル県(OKI県)で、県知事による事業許可の下、OKI REDD+事業に取り組んでいる。REDD+は途上国における森林減少・森林劣化によるCO2の排出削減と新規植林による炭素蓄積強化を行う活動のことで、気候変動対策として注目されている REDD+ (Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries)

 ※3 ISME ISMEは1990年に設立されマングローブ生態系の保全などの活動を行っている国際的なNPO/NGO。世界94カ国/地域に1,300人を超える個人会員と41の団体会員がおり、これまでに世界30カ国以上で調査・植林活動を行い、38カ国から250人を超える外国人に研修を行っている。国際的には国連経済社会理事会(UNECOSOC)への諮問的地位を有するNGOとして、国内的にはNPO法人として活動し、理事長の琉球大学名誉教授 馬場繁幸氏はYLFの技術顧問も務めている 

 ※4 Verra Verra(米国ワシントンDC)は世界で最も広く使用されている「Verified Carbon Standard(VCS)」を管理・認証する、国際的なカーボンオフセット基準管理団体 

 ※5 シルボフィッシャリ― 造林(Silviculture)と水産業(Fishery)を組み合わせた方法で、エビ養殖池にマングローブを植林し、自然に近い状態でエビや魚を育てる手法。以下のような特徴がある ・ 餌や薬品の投与を必要とせず、環境を汚染しない自然共生型の養殖方式 ・ 適切な森林管理を継続することで、養殖業運営コストをほとんどかけずに持続的な水産養殖を行うことができ、地域住民の生活向上に寄与 ・ 高波対策や護岸機能等の気候変動への適応策

※6 モーリシャスにおける自然環境回復事業 商船三井はモーリシャス環境・社会貢献チームを立ち上げ、マングローブやサンゴ礁の保護を始めとする自然環境保護・回復プロジェクト、現地政府等の公的機関や現地NGOへの基金の拠出等を通じた社会貢献活動を実施している

※7 ネイチャー・ポジティブ 生物多様性の損失を回避し、プラスの影響がマイナスの影響を上回るような状態にすることを指す。地球上のすべての生命の持続可能な未来のために、生物多様性を2030年までに回復軌道に乗せることが重要だと言われている。

※8 ネガティブ・エミッション 大気中のCO2 を除去し、貯留することを指し、森林やブルーカーボン等、自然界のCO2 吸収を増やす自然ベースのものと、化学工学的技術を使って大気中からCO2 を除去する技術ベースのものに二分される 


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