【アジア】日本郵船 パイプ内可視化デバラスト研修設備をフィリピンに新設

日本郵船はフィリピン・マニラに保有する船員研修施設のNYK-Fil Maritime E-Training(以下 NETI ※1)に、船員のデバラスト作業(貨物の積み込み中に本船のバランスを保つために行う排水操作)の習熟度向上を目的として、透明パイプを使用したデバラスト研修設備を新設し、2025年11月26日のNETI開所25周年記念式典で披露した。スケルトン構造のデバラスト研修設備は世界初(同社調べ)で、配管内とタンク底の水の流れを可視化することで、受講者の構造理解と作業の習熟度を高めてトラブルを減らし、輸送品質の向上を目指す。

デバラスト作業では、船体バランスを保つためにタンク内に保持しているバラスト水を貨物の積み込みに合わせて排出していく。積荷役においてデバラスト作業をいかに効率よく実施するかは、貨物の積載量の向上、荷役の遅延防止のために重要とされる。デバラスト作業には高度な知識と技量が求められるが、再現性の高い研修施設の不足などによって船員の習熟度は現場でのOJT(On the Job Training)に依存しており、陸上での効果的な研修の実施が難しかった。

そこで今回設置した設備には透明パイプを採用し、流体の動きを可視化することで、操作の影響を直感的に学べる構造にした。またタンクを傾斜させる機構や、バルブや配管、圧力計、電流計などの配置を工夫し、実際の船上に近い状態を再現している。これにより、コンピューターシミュレーション等では再現できない実際の運用に即した新たな研修環境を提供し、デバラスト作業のトラブル防止を目指す。さらにNETI講師による、ポンプが水を吸い上げる原理やバルブの特性などについての講義や、頻出するエア噛み(※2)などのトラブルシューティング学習により、受講者の理解度向上が見込める。


※1 NYK-Fil Maritime E-Training(NETI)

日本郵船が出資するフィリピン⼈船員配乗会社NYK-FIL Shipmanagementの100%⼦会社。2000年にフィリピンで設⽴され、同社グループ運航船に配乗される船員に対する訓練を実施している

※2 エア噛み

バラスト排⽔の際、配管内に空気が混⼊しポンプがバラスト⽔を吸引できなくなる現象


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