【流 通】立命館大学 PFASを低毒性半導体ナノ材料で分解

立命館大学生命科学部の研究チーム(※1)は、環境汚染や健康リスクの観点から国際的に問題視されている「永遠の化学物質」PFAS(ペルフルオロアルキル化合物 ※2)のうち、国際的な規制対象となっているペルフルオロオクタン酸(PFOA ※3)と、その中でも特に分解が困難とされてきたペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS ※4)の分解・無害化に成功した。

研究では、毒性が低く、安価で大量合成が可能な酸化亜鉛(ZnO)半導体ナノ結晶(※4)と、市販の近紫外LED光を組み合わせ、常温・常圧という穏やかな条件下でPFASをフッ化物イオンにまで分解できることを実証した。

生成したフッ化物イオンは、原料鉱石であるホタル石(フッ化カルシウム)として再利用可能であり、環境浄化と資源循環の両立を実現する新たな光触媒技術として注目されている。


※1 立命館大学生命科学部の研究チーム

小林洋一教授と同大学大学院生命科学研究科博士前期課程学生の金尾周平らの研究チーム

※2 ペルフルオロアルキル化合物(PFAS)

全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を含む有機化合物の総称。耐熱性、耐薬品性に優れるため、防水・防油加工剤、消火剤など、さまざまな用途で広く使用される。一方、その強固なC–F結合のため、自然環境中で分解されにくく、環境中に長期間残留することが問題となっている。また、生体蓄積性が高く、健康への影響も懸念されている

※3 ペルフルオロオクタン酸(PFOA)

全ての水素原子がフッ素原子で置換されたペルフルオロアルキル鎖をもち、末端がカルボン酸基(–COOH)の構造をもつ有機化合物(一般式:C7F15COOH)。極めて化学的に安定で、耐熱性・耐薬品性・低表面エネルギーに優れている。この特性から、フッ素樹脂(PTFE など)製造のプロセス助剤や、はっ水・はつ油コーティング剤、耐汚染処理剤など、さまざまな工業用途で広く利用されてきた。一方で、環境中での難分解性や生体蓄積性、健康影響が懸念され、ストックホルム条約(POPs条約)により国際的な規制対象となっている

※4 ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS) 

全ての水素原子がフッ素原子で置換されたペルフルオロアルキル基をもち、末端がスルホン酸基(–SO3H)の構造をもつ有機化合物(一般式:C8F17SO3H)。非常に安定で、耐熱性・耐薬品性・はっ水・はつ油性に優れており、はっ水・はつ油剤、消火剤、メッキ加工液、半導体洗浄剤など、多様な工業製品に使用されてきた。しかし、その極めて強い化学的安定性のために環境中で分解されにくく、生体蓄積性や毒性が問題視され、2009年にストックホルム条約の規制物質に指定された 

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