【知 識】住友林業と東京都 無花粉スギの生産事業化に向けて協定

住友林業は東京都と「無花粉スギの生産事業化に向けた協定書」を締結した。森林総合研究所や新潟大学などが開発した無花粉スギの苗木の量産技術を参考に組織培養で無花粉スギを増殖する。従来の挿し木や種をまいて育てる増殖法と比べ高効率に無花粉スギを増殖する技術を実用化し、無花粉スギの苗木生産の事業化を目指す。

現在、日本の森林は戦後に植林したスギやヒノキの人工林が伐採適齢期を迎えている。スギやヒノキなどの花粉により引き起こされるアレルギー疾患である花粉症は国民の4割程度が発症している。林野庁を中心にスギ人工林を伐採し、花粉の少ない木に植え替え、森林を循環させる花粉症発生源対策に取り組んでいる。

総面積の約4割が森林の東京都では都民の5割程度が花粉症であると推定されている。東京都は「花粉の少ない森づくり」で人工林を伐採して花粉の少ないスギなどに植え替え、森を循環することで木材の安定供給と林業の活性化を推進している。2024年4月、東京都は花粉発生源対策で無花粉スギの穂や球果を用いた増殖・育成技術を持つ協力事業者を募集し、住友林業はこれに応募し、選定された。

住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開している。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」で住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、社会全体の脱炭素化を目指している。

人工林を伐採し、花粉の少ないスギに植え替え、森林の循環を促進することは住友林業の長期ビジョン「Mission TREEING 2030」の実現につながる。東京都の「無花粉スギの生産事業化」の実現や社会が抱える「花粉症」の課題解決にも貢献できると判断し、今回の協定へと至った。


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