【流 通】村田製作所 アンテナ間干渉を改善するデバイスを開発

村田製作所は、アンテナに搭載することで無線性能の低下を抑制する新製品「アンテナ間干渉改善デバイス"Radisol(ラディソル)"」を世界で初めて(※1)開発し、2024年6月から量産を開始した。

近年、スマートフォンやウェアラブル端末には、Wi-Fi(R)、Bluetooth(R)、GPSなど多くの無線通信機能が搭載されており、それぞれの無線通信規格に対応する送受信用アンテナが高密度で実装されている。また通信品質向上に向けて、多数のアンテナを併用するMIMO(※2)や非地上系ネットワーク(NTN(※3))の普及にともない、端末に搭載するアンテナの数はさらに増える傾向にある。近い帯域のアンテナ同士が高密度で実装される際、空間に放射されるべき電力の一部が近隣のアンテナに干渉して流入し、アンテナの放射特性が低下してしまう。アンテナ同士の距離を十分に離すことでアイソレーションを確保し干渉を防ぐことができるが、スマートフォンやウェアラブル端末では、小型筐体内でスペースを確保することがむつかしい。そのためこれまでは、ディスクリート部品を用いて、干渉しているアンテナにタンク回路(※4)と呼ばれるフィルタ機能を形成することで、アンテナ間の干渉を抑制していた。ところがこの方法では、タンク回路の挿入損失(※5)の影響により、干渉を受けていたアンテナの特性が改善されてもタンク回路を挿入した側のアンテナの特性が低下するという課題があった。

そこで村田製作所は、独自のセラミック多層技術とRF回路設計技術により、高精度フィルタ特性と低挿入損失を両立したRadisol を開発した。同製品をアンテナの周辺で使用することで、低い挿入損失で近接するアンテナ間の干渉を防ぐことができる。また Radisolは小型のため、スマートフォンやウェアラブル端末など、限られたスペースに複数のアンテナを搭載するデバイスにおいて無線通信機能の安定化に貢献する。

※1 2024年8月4日 村田製作所調べ

※2 MIMO(Multi Input Multi Output)

送信機と受信機の両方に複数のアンテナを用いて、通信品質や通信速度の向上を図る技術

※3 NTN(Non-Terrestrial Network)

移動体通信をはじめとする無線通信ネットワークの一種であり、地上の基地局や海上の船舶、高高度の無人飛行機(HAPS)、宇宙に配置した通信衛星を多層的につなげたネットワーク

※4 タンク回路

インダクタとコンデンサを並列接続して構成する共振回路。特定の共振周波数でインダクタとコンデンサが存在しないかのように機能する。干渉対策では、特定範囲の周波数成分を遮断する帯域除去フィルタ(Band Stop Filter:BSF)として利用する

※5 挿入損失

信号が伝送路を通過する際に失われる電力量


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