【知 識】西松建設と戸田建設 火山ガラス微粉末を用いたコンクリートの研究に着手

西松建設と戸田建設は、コンクリート用火山ガラス微粉末を用いた環境配慮型コンクリート(低炭素性)について将来の発展性を考慮し、共同で基本性状を確認し、研究開発に着手した。

コンクリートは様々な構造物に使用されているが、その製造に関わるCO2の排出量のうち、セメントの材料を起源とするCO2排出量は約9割を占めている。そのためセメントの一部を、高炉スラグ微粉末やフライアッシュのような産業副産物で置換した混合セメントの利用が求められており、両社も従前より高炉スラグ微粉末を使用した環境配慮型コンクリートの開発に取り組んできた。しかしながら脱炭素に向けて、高炉から電炉製造への転換や火力発電の縮小の動きが見られ、高炉スラグ微粉末やフライアッシュの供給量が低減する可能性がある。そこで、国内で調達可能な天然資源である火山ガラス微粉末に着目し、新たな環境配慮型コンクリートの研究に着手した。

火山ガラスは火山性堆積物を主原料とする天然ポゾランであり、火山堆積物(シラス)が広く分布する鹿児島県では、県発注の一部の工事や二次製品のコンクリートへ使われる等積極的に活用されている。また、火山ガラスを一定の粒度に調整した火山ガラス微粉末は、以下のような特徴を有している。

(1)焼成の必要がなく、セメントと比較して、製造における環境負荷が小さい

(2)原料となる火山性堆積物は国内に広く分布しており、運搬における環境負荷の低減が期待できる

(3)セメントや骨材と置換して使用することで、コンクリートの圧縮強度や耐久性の向上が期待できる

このような特徴から、火山ガラス微粉末はコンクリート製造時におけるCO2排出量削減効果のあるセメント代替品として、さらに、我が国では100%輸入に頼っている高強度コンクリート用シリカフュームの代替品としての活用が期待されており,2020年3月にJIS A6209(コンクリート用火山ガラス微粉末)が制定された。また2022年にはJASS5(建築工事標準仕様書・同解説:鉄筋コンクリート工事)に混和材料として、2024年にはJIS A5308(レディーミクストコンクリート)に使用材料として「コンクリート用火山ガラス微粉末」が記載された。

両社は鹿児島県産火山ガラスを使用したコンクリートの基本物性を確認したため、今後は実構造部への適用を目標とし、レディーミクストコンクリート工場において、出荷を想定した試し練りや、模擬試験体による強度、耐久性、施工性等を確認する。また実出荷時のCO2削減量に関して試算検討を進めていく。


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