【流 通】衛星測位分野の国際事業にJAXAと国土地理院が共同参画

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国土交通省国土地理院は、GNSS(※1)衛星の精密な軌道情報を算出する体制を構築した。この取組が衛星測位に関する国際機関である国際GNSS事業(IGS ※2)に認められ、国内では初めて同事業に軌道情報を定常的に提供することになった。提供する軌道情報は、現在の衛星測位分野において最も精度が高いとされているIGSの軌道情報の算出に活用される予定で、これまで海外機関に依存していた日本の位置の基準を、より自律的・安定的に維持・管理できることが見込まれるほか、測地・測位分野の研究活動の促進が期待される。

GNSSは衛星の軌道情報(暦:れき)を基にして地上の位置決定(測位)を行うシステムで、地殻変動が激しい我が国では、位置の基準の維持・管理に活用されている。より精度の高い測位には、より高品質な軌道情報(精密暦:せいみつれき、別紙)が必要不可欠で、現在は国際GNSS事業(IGS)が提供するIGS暦が最も高い精度を有するとされている。IGS暦はIGSが高い技術力を有すると認めた北米、欧州、中国の限られた国家機関・研究機関・大学等の精密暦を基に算出されている。このため日本の位置の基準は海外機関に大きく依存しているという課題があった。

これまで国土地理院は、全国約1,300か所の電子基準点(※3)におけるGNSSデータ解析を25年以上にわたって安定的に実施してきた。またJAXAは国産のGNSS軌道計算ソフトウェアであるMADOCA(※4)を開発し、精密暦の精度改善に関する技術開発を長年行ってきた。今回、両機関が連携し、国土地理院がMADOCAを用いて精密暦を算出し、JAXAがその運用結果に基づきMADOCAを改良する協力体制を構築することで、精密暦の安定的な算出が国内で可能となった。この取組がIGSにも認められ、我が国では初めてIGSに精密暦を定常的に提供することとなった。提供する精密暦は、IGSの準備期間を経て、正式にIGS暦の算出に活用される予定になっている。

今回の取組により、精密暦を国内で独自に算出できるようになる。また提供する精密暦の品質がIGSによって定常的に評価されることにより、精密暦の品質を継続的に維持、改善することができる。これにより、より自律的・安定的な位置の基準の維持・管理が見込まれるほか、測地・測位分野の研究活動の促進が期待される。今後は「みちびき」を含むGNSSの精密暦の公開環境を整備し、高精度測位時代における位置情報の基盤の整備・更新を着実に進めていく。


※1 GNSS(Global Navigation Satellite System)

人工衛星を用いて、地球上の任意の位置を求めるシステムです。米国のGPS(Global Positioning System)や日本の準天頂衛星システム「みちびき」が含まれる


※2 国際GNSS事業(IGS:International GNSS Service)

測地学・地球物理学等の研究活動の支援及び社会一般でのGNSSの利用促進を目的として、国際測地学協会(IAG)の下で参加機関の国際協力により運営されている国際組織


※3 電子基準点

全国約1,300か所に設置されたGNSS連続観測点で、日本の位置の基準である「国家座標」に整合する。主に測量の基準点、地殻変動の監視、位置情報サービスの支援として広く活用されている


※4  MADOCA

(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)

複数GNSS対応高精度軌道時刻推定ツール

電子基準点やIGSの観測点等のGNSS観測点で取得した情報を基に、GNSSの正確な軌道情報(精密暦)や衛星時刻、GNSS 観測点の座標値等を計算するためのソフトウェア


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