【アジア】三菱重工業 インドネシアでエネルギー脱炭素化を支援する事業化調査

三菱重工業はインドネシアにおける既設火力発電所の燃料としてアンモニアを導入することで、同国のエネルギー脱炭素化を支援する事業化調査(Feasibility Study:FS)に着手した。日本の優れた技術・ノウハウを活かしたインフラによる国際貢献策の発掘・提案を狙いに経済産業省が公募するFS事業の令和4年度採択案件として、同社の2案件が採択された。スララヤ(Suralaya)石炭焚き発電所と同国内既設ガス焚き発電所が対象で、いずれも同国で豊富に産出する石油・天然ガスの改質で得られるアンモニア(※)について製造・輸送・燃料消費およびCO2貯留にわたる一連のバリューチェーンの構築を視野に入れている。

経済産業省の「質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(我が国企業によるインフラの海外展開促進調査事業)」に採択された2案件は、「インドネシア国・スララヤ石炭火力発電所向けアンモニア混焼実施可能性調査並びにバリューチェーン全体評価調査事業」(スララヤ案件)と、既設ガス焚き発電所を対象とする「インドネシア国・既存ガス火力発電所改造によるアンモニア利用発電導入およびバリューチェーン確立に関する可能性調査事業」(既設ガス火力発電所案件)で、いずれもエネルギーに由来するCO2の削減効果が期待でき、地球規模での波及性・公益性および先進性が高く、日本政府が関わる事業としての政策的意義が評価された。

スララヤ案件はインドネシア国内で製造されたアンモニアを発電所に輸送して、発電燃料として消費するプロセスを想定した経済性を試算することがテーマで、三菱商事と日本工営と共同で取り組み、2030年頃の運用開始を視野にプロジェクトを進めていく。一方の既設ガス火力発電所案件は同国内で製造されたアンモニア・水素を近隣の既設天然ガス焚き発電所に輸送して、発電燃料として消費するプロセスにおける経済性を試算することがテーマで、東電設計と共同で、2020年代後半の運用開始を視野にプロジェクトを進めていく。

両案件とも一連のバリューチェーンにおけるCO2排出削減効果を検討するもので、三菱重工業は主にアンモニア発電技術導入効果を検討する。併せて日本政府によるファイナンス支援やインドネシアにおける炭素税・カーボンプライシングなど制度面での支援策を踏まえてFSを行う予定にしている。一連の事業推進を通じて、日本のエネルギーインフラ輸出拡大にも寄与したいとしている。

インドネシアは2025年までに電力供給の23%、2035年までに28%を再生可能エネルギー由来とする方針を打ち出している。三菱重工業もグループを挙げて、インドネシア国営電力会社グループやバンドン工科大学(Bandung Institute of Technology:略称ITB)に協力して、同国の目標達成に向けたアプローチを支援している。


※ アンモニア

天然ガスなどを蒸気メタン改質や自動熱分解などで水素(H2)とCO2に分解し、CO2を大気放出することなく回収して得られた温室効果がゼロの水素は、"ブルー水素"とも呼ばれる。これを窒素(N2)と化合させることで、同じく温室効果がゼロのいわゆるブルーアンモニア(NH3)が得られる。今回の2案件では、このブルーアンモニアが利用される予定になっている。


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