【流 通】ANAグループ 社員提案制度で産直の新会社設立

ANAグループは社員提案制度により日本産直空輸を設立した。2019年度に検討を進め、2021年からは複数の大手小売りとも連携し、20回ほどの実証実験を行ってきた。産直空輸の事業性が検証できたので、新たに本格展開するための会社を設立することになった。航空貨物と地上輸送を有機的に連携したスピード輸送と産地および小売店の連携による最速流通で、地方の採れたての価値が高い農産品・魚介類などを抜群の鮮度で運び販売する。

「農産品の本当の価値を消費者に届けたい」との想いを持つ一人のANA社員が、2019年度のANAグループ社員提案制度「ANA バーチャルハリウッド」(※)で提案し、その後2年半にわたり多くの賛同するメンバーと一緒に検討・検証を進めてきた。2021年10月からは提案者がANA総合研究所に所属して事業立ち上げに向けて動き出し、今回、日本産直空輸として正式に誕生した。新会社としての営業開始は2023年4月1日をめざしており、それまではANA総合研究所内で実証実験を兼ねた事業として運営する。

「産直空輸」は飛行機を利用して農産品や魚介類などを産地から主に首都圏などの大消費地に異次元の速さで運搬することによって、主に一次産品である農産品や魚介類などの採れたての鮮度の価値を消費者に届けるしくみで、従来の産地、卸売り、空輸、地上運送、小売り、消費者とつながる流通を、鮮度の価値を最重要視する流れに変革するために、全体を一気通貫でコーディネートすることがこのビジネスの肝とされる。また旅客機の貨物空きスペースを活用することにより、既存の流通には乗ってこなかった少量生産の農産物、首都圏ではなかなか出回らない希少品や、地方に眠る逸品なども扱うことができる。 

昨今、農業の6次産業化が必要と言われているが、1次産業の持つ真の価値を最終消費者まで届けるには、全体をトータルにコーディネートする事業が必要であり、今回の事業化によって、従来の一次産業を活性化して儲かるビジネスにすることにつながり、地方への人の交流や移住が拡大することも期待される。日本産直空輸はANAグループ(ANACargo、ANA総研、ANAあきんどなど)と連携し、地域創生に貢献するビジネスモデルとして発展・拡大することをめざす。


 ※ ANA バーチャルハリウッド 2004年度から16年間にわたり実施されてきたANAグループ社員提案制度で、約200件の提案に1,700名ほどの社員が参加して活動した。2021年度からは、しくみを見直し「ダ・ビンチ・キャンプ」との名称で実施している。この提案制度から生まれたスタートアップは2020年4月1日に設立したavatarinに続き2社目となる 


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